どうも、SUYです!
今回は、
神奈川県東部産本土ノコギリクワガタ
の飼育記録になります。

久しぶりの国産種の飼育記録になります。
気づけば外国産メインとなってしまった今でも国産種は細々とやっていたのですが、イマイチ記事にできるほどちゃんとやっていなかったのが理由として大きく、今回も決して超真面目にブリードしたわけでもなく、せっかくまともに羽化してくれたので紹介します。

正直、真面目にブリードしようと思って記事を途中までクソ真面目に書いてたんですけど、割り出し遅くなってしまったのと、羽化してみたらびっくりするくらい普通サイズだったのでまたボツにするかなぁと思っていたんですよね…

どうせ真面目にやるなら、自分自身を鼓舞する意味でもここいらでクソみたいなサイズでもちゃんと記事にした方がいいよねってことであえて残しておくことにしました😅


例えば、「ノコギリクワガタを繁殖させてみたいけどどう飼育すればいいのか分からない」と思っていて、調べた結果ここに辿りついたような場合に何か参考になればと思い記録として残しておきます。

ですので、今回の飼育記はどちらかと言うと初心者向けとなりますのでご承知おき下さい。




◯種親紹介

今回は、去年6月中旬に神奈川県東部ポイント④にて採集(リリースしたんじゃね?って思うくらいほとんど情報ないですがその時の採集記→http://kuwaheyasuy0121.blog.jp/archives/84935773.html)した♂63.5mm×♀35.5mm種親にした個体群になります。

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2021年採集MAXサイズの63.5mm
この個体は、大顎こそ短めなものの体幅があり迫力がある個体でした。


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♀も同じく2021年最大サイズである35.5mmに頑張ってもらいました。体色に関しては、赤みを強調させるのがかなり難しく黒っぽくなってしまいましたが、実際は赤かったです。



◯飼育記録〜産卵から羽化まで〜


2021年9月19日産卵セットへ♀投入

採集から時間も経っていたので、産卵セット投入1〜2週間前くらいに、♂と♀を一緒のケースで同居。同居後すぐにメイトガードが確認できたので、この時点でペアリング完了とみなす。その後、数日間一緒にしておいた。管理温度23〜24℃。
本土ノコギリは滅多に♀殺ししないので楽ですよね!


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産卵セットは、
ケース:デジケース使用
使用マット:購入から半年ほど経過した古い栄養フレークEX

材:転倒防止用に入れた材の欠片以外なし
水分:多すぎずパサパサしない、手で持った時水気をしっかり感じる程度(少し多めにしました)に加水

画像に写ってないですが、下から7割ほどマットを固くつめる。残りは固く詰めずふんわりと入れる。
産卵セットは23〜24℃にて管理。

♀は爪の力も強く状態こそバッチリなものの、10月も近くなったタイミングでの産卵セットだが無事産卵してくれるだろうか…?



・10月20日頃産卵セット内での孵化確認

側面に見えていた卵が孵化し始めた。秋のセットでも状態が良ければ産卵して孵化もしてくれるようだ。管理温度20〜24℃。


・2022年1月23日産卵セット割り出し

割り出しが遅くなってしまい、すでに3齢になってしまっていた。2齢で割り出そうと思っていたのだが…。

デジケースで産卵セットを組んでいたのと、割り出しが遅くなったのが相まって割り出し総数は♂5♀3となった。


♂4頭は、800ccクリアボトルに一頭ずつタイワンシカやペロッティシカの幼虫飼育で使用した生オガ発酵マットを加水して再利用。食の細いタイワンシカや♀で使用したマットなので、食痕はあまりなく生オガ発酵マットということもあり劣化も進んでいなかったため十分餌として機能してくれると判断したからだ。

なお、♀3頭は1400ccに同様のマットをゆるく詰めて多頭飼育。


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ノコギリクワガタの♂3齢幼虫。比較的若い幼虫でまだ大きくなる。本種の幼虫は大きくなると胴体が細長くなる。

♂個体は全て頭幅8mm前後の3gほどで、成長すれば10g以上になるノコギリの幼虫としてはまだまだ若い方である。
しかしながら、産卵セットで3齢まで放置した個体で大きくなることは基本はない。

ということで、かなり低い目標になってしまいますがとりあえず60mmが見れたらと思ったので、60mm目指して飼育開始。
冬場管理温度16〜19℃。


・2022年4〜5月頃順次蛹化

季節により温度が上下するブリードルーム管理のため、春の気温上昇でスイッチが入ってしまい早期蛹化してしまった。てっきり小〜中歯連発してしまうかと思っていたのだが、意外にも大歯型のみが蛹化した。
3月中旬より常温管理(15〜25℃)
4月下旬よりエアコン管理(20〜24℃)


・6月順次♂羽化
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7月17日撮影
この時点ですでに固まっていました。
森でノコギリクワガタ見つけるのももちろん良いですが、活動前の蛹室から掘り出す瞬間もまた幼虫飼育した時のみ味わえる最高の瞬間ですよね!
この個体は♂親に少し似て、大顎が短いもののカーブ強めで大顎広げた時の迫力がありますね。



・7月上〜下旬♀羽化
意外にも♀の方が羽化が遅かったです。
あまりノコギリでは幼虫同士が喧嘩して欠損や☆になる個体が多くなるのでおすすめしませんが、1400ccに3頭多頭飼育していた個体だった。



<羽化個体紹介>

元々そこまで抱えるつもりではなかったので羽化個体は少ないですが紹介していきます。
ぶっちゃけ、こんな使い古しのマットをボトルに詰めるだけの適当飼育なんですが、こんなのでもノコギリブリードする余裕なかったくらい虫に割ける時間が少なく、なんとかブリード回したとかいうレベルなので悪しからず(笑)

全ての個体で以下の飼育温度で管理しました。
1〜2月:16〜19℃
3〜4月:15〜23℃
5〜6月:20〜24℃

では、紹介していきます。



①55.5mm
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2022年1月23日3齢割り出し
→食べ残し生オガ発酵マットをゆるく詰めた800ccへ
(頭幅7.9mm3.8g)
2022年6月羽化

♂親の形質を遺伝かつthe飼育個体といった形の個体。赤みだけで言えばこの個体が一番かと思います。野外個体でも55mmくらいから大歯形になるので大歯形ギリギリサイズになるかと思います。やはり、春先の気温上昇で蛹化スイッチが入ったことですぐさま羽化してしまった感が否めませんね…。



②56.4mm
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2022年1月23日3齢割り出し
→食べ残し生オガ発酵マットをゆるく詰めた800ccへ
(頭幅7.8mm2.9g)
2022年6月羽化

本当もうサイズが小さいのが申し訳ないのですが、他個体に比べて頭部大きめで大顎の形が若干違いました。親♀の形質ですかね?




③56.8mm


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2022年1月23日3齢割り出し
→食べ残し生オガ発酵マットをゆるく詰めた800ccへ
(頭幅8.2mm3.6g)
2022年6月羽化


大顎先端の唸りが格好良いですが、これもサイズが小さいのが申し訳ないです。
この個体が大型になったらメチャクチャ格好良かったんだろうなと考えてます(笑)
この個体は黒めです。




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2022年1月23日3齢割り出し
食べカス生オガ発酵マットをゆるく詰めた1400ccへ♀3頭多頭飼育
2022年7月羽化
左32.1mm、右30.2mm

一頭羽化後☆



<結果・まとめ>

①幼虫のエサについて。
今回はたまたま他の種類で使用した生オガ発酵マットが割と食痕があまり目立たず残っており、もったいないので流用してみたが、熟成も程よく進み、本種に良いエサになったと考えられる。今回は春の気温上昇でかなり早い蛹化になってしまった(羽化までの推定幼虫期間8ヶ月)が、それでも大歯型を出すことができたからである。3月の時点ではまだ幼虫は白かったので温度管理次第ではまだ大きくなったものと考えられる。



②温度管理について。
上記にも軽く記したが、全ての個体が春先の気温上昇で蛹化してしまった。いかに蛹化させず成長期後の成熟期間を持たせるかが重要であると考える。
というわけで、春先の気温上昇によるスイッチを入れさせないために温度を下げたまま維持することを次世代の飼育指針としたい。



<飼育方法まとめ>

◯成虫管理
本種は雑木林が少しでも残っていればどこでも生息しており、神奈川県東部(平地)ではコクワガタと同じくらいか場所によってはコクワガタよりも多く見ることができるクワガタである。
それゆえに成虫及び幼虫飼育においても比較的高温にも耐えることができる。成虫に関しては28℃を超える環境でもできる限り湿気を抑えて通気の良い状態で管理することで飼育できる。

◯産卵
所謂、"発酵マット"と呼ばれるクワガタの幼虫飼育専用のマットで産卵可能である。産卵用と書かれたものが失敗が少なくおすすめであり、特に発酵度合いは問わないようで色の薄いマットでも問題なく産卵可能。本種は野外では土中に埋まった状態のよく朽ちた木に産卵することが分かっている。それをケース内に再現する方法が、
①微粒子の発酵マットをケースに7割ほど固く詰めてその上にふんわり敷き詰める2段方式
②3〜4割固詰めし、その上に産卵材を置き周りをマットで埋める方式
2パターンがある。ノコギリはどちらもよく産むので好みのセットを組むと良い。産卵材はあくまで産ませるために必要というよりは、固いもののの周りに卵を産む性質があるために入れるもので固さは問わない。
個人的には発酵マットを固詰めする方式がおすすめ。水分は乾燥しないように少し多めが良い。温度は22〜28℃推奨。


◯幼虫飼育
産卵に成功するとケース側面や底面に卵が見えることもあり、温度次第ではあるが産卵された卵は基本的には3週間前後で孵化する。孵化後の幼虫は1齢または初齢幼虫と呼ばれ、その後脱皮をして初齢→2齢→3齢→蛹となる。蛹(蛹になる前に蛹の部屋である蛹室を作成するとこの段階から食べなくなる)は摂食行動をとらず、幼虫時代にいかにエサであるマットを食べさせて幼虫をいかに大きくするかで成虫のサイズが変わってくる。

飼育方法としては2パターンあり、

①発酵マット
②菌糸

どちらも問題なく成長できるが、菌糸は本土ノコギリにおいては扱いが難しいので、マットでの飼育がおすすめである。


エサとなる発酵マットへの順応性は高く、発酵の浅い肌色っぽいマットからよく発酵した黒っぽいマットまで対応可能で、そこまで神経質にならなくても飼育できる。
ただし、マットへの添加物の量が多いと羽化したときに腹がしまいきれない個体になってしまったり、腹が大きい不恰好な個体になってしまったりすることがある(あえて記載していないが今年羽化した個体の中にも腹部が肥大化してしまい上翅がしまいきれない個体が出現してしまっている)。

また、幼虫飼育は基本的には一頭ずつ別々に飼育した方が良い。ノコギリは幼虫同士で喧嘩して、傷がついたり最悪の場合片方が☆になってしまうため。また、できるだけ大型の個体を飼育するのであれば、一頭ずつ飼育した方が大きくなりやすい。容器は主に円筒形のボトルや瓶を用いて飼育するとコバエなども防止しやすく、観察しやすいことからもおすすめ。



◯蛹化羽化

幼虫はマットなどを食べ成長しきると黄色くなりピーク時より体重が減少する。こうなると蛹化するために幼虫が必要とする部屋"蛹室"を作成する。
その後蛹室内で摂食行動を取らなくなり蛹室内で頭部と脚が動かなくなり皺が寄る状態である"前蛹"となる。
前蛹となった幼虫はだいたい2週間ほどで蛹化し、そこからさらに1ヶ月前後で羽化する。
ちなみにどのクワガタもそうだが、大きくなるのは幼虫時代のみであり前蛹及び蛹化後は体重が増えることはなく、その時点でサイズがほぼ決まる。


◯休眠

本土産のノコギリクワガタは基本的には初夏〜秋口くらいに羽化してからそのまま蛹室内で留まって半年以上休眠し、冬を越えて暖かくなると活動を開始してゼリーを食したり繁殖活動を行えるようになる。

羽化後、蛹室から出してしまった場合は霧吹きなどで湿らせた広葉樹のマットに転倒防止材とお好みでティッシュを加水して入れる。休眠中とはいえ乾燥には弱いので乾燥してきたと思ったらすぐさま加水を行い乾燥しないように気をつける。後食開始すると入れていたティッシュをぐちゃぐちゃにするので活動の目安になる。活発に活動するようになれば、後はゼリーを入れてあげると食べるようになるので最初の成虫飼育へと戻り1サイクルを経る。





<最後に>

この夏、ノコギリクワガタを採集したあなた。
ぜひ一夏の思い出にせず、その思い出のノコギリクワガタの子孫を残して幼虫飼育にチャレンジしてみませんか?

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♂がいなくても、採集個体であれば♀一頭のみからでも産卵できる可能性が高いです!
ぜひ、興味があればノコギリクワガタ飼育してみて下さいね👍


実際、ノコギリクワガタの飼育は結構奥が深いと思いますね。簡単に大きくならないですし、でも、マットさえちゃんとしたものを使えば大歯は羽化させられるわけですからね笑

次世代は65mmくらいでもいいので頑張って羽化させたいですね!😅




ではでは(・ω・)ノ