どうも、SUYです。
今回は、私が唯一5年以上累代を継続している
ババクルビデンス(旧流通名:南ベトナムクルビデンスssp.)
Dorcus curvidens babai
の飼育記録になります。
昨シーズンより2ラインに分けて管理しており、今回紹介するのはAラインになります。
<種親紹介>
産地:ベトナム・ダラット
累代:CBF2
アウトブリード(それぞれ別の血の掛け合わせ)
種親♂
大顎を広げた最大値で72mm
(大顎を閉じると70mm)
♀43mm
<飼育記>
◯2020年10月3日産卵セット
小ケースに底3〜4cmフォーテック社製産卵一番(無添加微粒子一次発酵マット)を固詰めし、その上に材を置き周りもマットを詰めて埋めるオーソドックスな産卵セット。本種はマットにも産むので、マットも微粒子が良い(何回言ったことか笑)。
◯2021年2月13日産卵セット割り出し
情報が残っておらず、何頭割り出したのか分からないが、3齢複数、2齢4〜5頭くらい出てきたのでその♂と思われる2齢幼虫と♀の3齢初期のみ大夢オオヒラタケ800cc菌糸に投入したと思われる。
飼育温度18〜22℃
この時色々ゴタゴタしてて、時間が作れなかった頃だったので割り出しが遅くなってしまいました💦
4ヶ月経っての割り出しが遅いのがよく分かりますよ…
◯2021年5月3日菌糸交換
♂4頭菌糸交換を行なった。♀は交換せずそのまま、全て17℃で管理。正直言ってここまでは良かった。この後、地獄を見ることに…。
正直、そういう意味では今回の記事は失敗談になるかと思います💦
◯2021年9月18日菌糸交換
この時点で♂3、♀全個体蛹室作成or蛹化羽化。♂は暴れて劣化したドロドロ蛹室で蛹化不全。♀は17℃でそのまま蛹化して蛹化不全→☆を多発させてしまった。前蛹で気づいて24℃に出した一頭の♀のみ救出、無事羽化まで持っていくことができた。
一方、♂幼虫は一頭だけ暴れておらず、菌糸交換を実施。
25.3gだった。糞をする前は26gあったので暴れず、スムーズに蛹化すれば75mmくらいならいけるかも?
♂は蛹室作成した個体のみ23℃管理のブリードルームへ出し、25.3gの個体のみ17℃管理継続。
◯2021年10〜11月♂羽化
♂が3頭羽化、完品羽化できたのは60mm台半ばの一番小さかった個体のみ。一頭は蛹の時点で左右非対称でおかしく残念ながら片翅が形成不全となっていた。もう一頭は蛹自体は歪だったものの羽化時はたまたま居合わせて不全しそうなところを手助けしてことなきを得た。不全個体は今のところ生存している(この個体は結局羽化から2ヶ月後に☆になってしまった)。
基本的には、17〜18℃の温度帯は蛹化する温度だが、上手く蛹化できない温度なのかもしれない。
そもそも、今回は暴れた個体に関しては蛹室がドロドロになったまま蛹化させてしまったことが一番の失敗だとも思えます。これからは菌糸の状態に注意したいですね。
◯2022年1月中旬最後の♂蛹化
最終体重25.3gの♂が蛹化していた。
初めて蛹体重を計測したところ、17.3gだった。
管理温度16〜22℃。
見えづらくてすみません😅
◯3月21日最後の♂羽化
最終体重25.3gの♂が羽化していた。
↓一週間後
全体的に少し細身で、蛹体重の割にはサイズが伸びたようだ。
しかしながら、見た感じだと75mmに少し足りないくらいのサイズかなぁと。1ヶ月後に計測するのが楽しみだ。
割り出しが遅くなってしまい、全体的に小さくなってしまったのと、不全が目立ったので2代目のブリードは蛹化時の温度と蛹室の状態にも気を遣いたい。大した個体がおらず申し訳ないが、羽化個体紹介へ。
<羽化個体紹介>
①不全♂70.0mm
・2021年2月13日大夢Bオオヒラタケ800ccへ
・5月3日大夢Bオオヒラタケ1400ccへ→体重記載忘れ17〜19g(頭幅13mm)
・9月羽化
2本返しで不全ではあるものの、サイズは70mmに届いた。
②♂65mm
・2021年2月13日大夢Bオオヒラタケ1400ccへ
・5月3日大夢Bオオヒラタケ1400ccへ→16.2g(頭幅11.9mm)
・11月14日羽化
この個体は、羽化後干からびさせてしまいました…。
画像ちゃんと撮れていなかったのでこんな画像ですみません。
③♂(軽微不全) 70mm
・2021年2月13日大夢Bオオヒラタケ800ccへ
・5月3日大夢Bオオヒラタケ1400ccへ→ラベル紛失17〜19g
・11月羽化
♂親似ですね。
サイズ稼ぎには不利な湾曲具合ですが、個人的に好きな形の一つです。
種親に使おうと思っていたのですが、羽化から2ヶ月後の1月中旬に☆になってしまっていました。
④♂74.1mm
顎閉じの方が本種の良さがわかると思い掲載…顎閉じ写真もどうぞ!
・2021年2月13日大夢Bオオヒラタケ800ccへ
・5月3日大夢Bオオヒラタケ1400ccへ→11.1g(頭幅未計測)
・9月18日
ラ◯バージャックオリジナル菌糸既製(ブナオガヒラタケ?)1400ccへ→25.3g
・2022年1月中旬蛹化→17.3g
・3月21日羽化
この個体は♂親に似ているのですが、顎先が少し前を向いていて格好良いですね。今季最大個体です。
⑤♀43mm
画像割愛
・2021年2月13日割出
大夢Bオオヒラタケ1400ccへ→3齢4.9g
・7月中旬羽化
<飼育方法まとめ>
本種の飼育は簡単ですが、改めて記載します。これから始めるまたは飼育したいと思っている方の一助になれば幸いです。
◯成虫飼育
・寿命について、本種はオオクワガタ系のドルクスなので非常に長寿で当方ではペアリングに使用した♂でも3年生きている。
・飼育温度については、丈夫で飼育温度帯も幅広い。関東の平野部で室内飼育であれば冬でも常温飼育できる(その場合は冬眠?する)。最高温度も30℃でも結構耐えられるが、寿命が短くなるようで生体に負担が大きくおすすめできない。16〜23℃での飼育がおすすめ。
○ペアリング・産卵
・ペアリング時はたまに♀殺しすることがあるので要注意。当方では顎縛りなどは特にせず一週間以上同居ペアリングさせているが一度もそういったことは起きたことはない(そもそもうちで飼育している本種は♂同士近くに置いても滅多に喧嘩しない)。しかし、♀殺しが起きた例もあるのでペアリングには一応注意する必要がある。
・産卵は20〜24℃の高めの温度で行い、産卵活性が落ちる冬時期はできるだけ避けた方が良い。
・産卵セットは小〜中サイズ(コバエシャッターやコバエ抑制ケースetcの規格で)のケースに、微粒子発酵マットを適度に加水して固詰めし、その上に少し柔らかめの産卵材を加水(マット・材共に加水量はここでは詳しく説明しないが程よく多すぎない少なすぎないよう注意する)して周りをマットで埋めるオーソドックスなセットで良い。特に植菌材などの特別な産卵材は必要なく普通の産卵用の材で問題ない。・産卵形態は主に材に産卵するが、マットにも産卵する。典型的な根食い系の産卵形態。
◯幼虫飼育
・初2齢で産卵セットから割り出し、基本は個別にボトルやプリンカップなどで飼育する。
・マット、菌糸、材どれでも飼育可能だが、菌糸が一番成長が良い。本種は3齢中期以降菌糸を好まない個体が多く、暴れることが多いので適宜マットに交換するなどして対応するのもあり。
・幼虫飼育温度は成虫よりも少し範囲が狭いと思えば良い。オオクワガタ系のため多少高い分にも低い分にも問題はない。
・割り出し(2齢初期と仮定)から羽化までの期間は、♀で4〜10ヶ月、♂で半年〜12ヶ月強ほどとなっており、だいたい♀の方が羽化が早い。
◯蛹化羽化
・本種は18℃未満でも蛹化するので、冬時期の蛹化で不全することがあるので注意する。今飼育記では不全が多かったが、比較的蛹化羽化は得意な方である。
・大体どの種類もそうだが、菌糸で飼育した場合は菌糸の劣化により蛹室が変形したり泥化して蛹が蛹室内で引っ付いてワンダリング(蛹は全く動かないわけではなく床ずれ防止のためか適度に回転して運動している)できず☆になることもあるので注意する。
できるだけ温度が安定する場所での管理をオススメする。目安は18〜24℃。
また、羽化後の休眠期間は20℃以上で3〜4ヶ月くらい。もちろん、温度が低いと長くなる。
<まとめ・考察>
本種に関しては、以前からレコード獲得を目指して飼育に取り組み、大型個体を飼育する方法を模索して色々考察をしてきました。
最近、以前ブログに書いた考察を見ていて新たに大型化に向けた仮説が生まれたので次期ブリードに向けて考察をしていきます。
正直、自分用の備忘録のようなものでかなり長文になります😅
読むの面倒な方は読まない方がいいと思います笑
①幼虫の時期に合わせた飼育温度の緩急
本種の生息場所は、標高1500m程の高地であり、高い温度だと成熟が早くなり低温でじっくりと飼育することで大型化できると思っていたのだが、どうやら大型化には高めの温度と低い温度を使い分け、緩急をつけた方がいいかもしれない。
→本種においては23℃でも18℃程度の温度帯でも成長期の成熟スピードがそこまで大差がないと感じていて、成長期は少し高めの温度で一気に太らせ、途中から温度を少しずつ下げていき、成熟期に極低温を経験させることで、蛹化スイッチを入れることなく食べたものをしっかり消化させ身につけさせる"熟成期間"を持たせる。
しかしながら、極低温の温度はまだよく分からないので実際にブリードして検証していきたい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これに関しては人間だってそうだと思うんですよね。
食べたものがすぐに身になって身長が伸びるわけじゃないですよね笑
それと同じ理論です。
クワガタ幼虫の場合は前蛹になる時は体内の糞が全くない状態にしているはずなので蛹化するために蛹室を作ろうと思ったら、とりあえず未消化だろうが糞として排出するので実計測体重よりも体内の未消化物分体重がごっそり減るわけですよ…笑
いわゆる、そうして残った身のみが、一般的に言われる"還元率"なんだと思うんですよね。だから、個人的には最大体重を見たらいけないと思っていて、その理由に最大体重ってことは、それより大きくならない状態で餌を交換するという幼虫にとっては無駄以外の何ものでもないことをしているわけで、さらに交換したストレスによって成熟になんらかのマイナス点があると思うんですよね(というか、還元率に大きく影響すると思ってます)。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
②本種の暴れる理由について
主に理由が二つあると考えており、
1.羽化まで必要だと思われるエサの量がボトル内に足りず、エサの豊富にある場所を求めて動くための暴れ。
→ボトル内の菌糸またはマットをある程度食べると、幼虫自身が"このまま成長を続けてエサの量が足りるか"を判断し、足りない場合は新たなエサ場を求めて徘徊する行動(暴れ)をとる。そうなると、その個体の危機管理能力が働くことで体重増加が止まり、蛹化に向けて成熟スピードが上がると考えられる。そのため、大体の個体がこの徘徊行動を取るとそれ以上大きくならない(徘徊するため痩せてもいると思われる)印象を受ける。
そのため、3令の中期以降は食べ進むスピードが早いと思われる、チップの細かい菌糸だと食い上がるまでが早くなりより暴れやすくなると考えられる。また、容器は大きめの容器で幼虫自身にエサが豊富にあると思わせる方がこの徘徊行動(暴れ)を取らせにくくできると考えられる。
2.エサの状態が幼虫に合わず、新たなエサを求めて動くための暴れ。
→単純に菌糸が新しすぎたり、そもそも3令後期に菌糸が合わなかったりする(これはノコギリやニジイロなんかも起こる現象で3令中期〜後期に蛹化や越冬のために材から脱出し土中で過ごす根食いのクワガタが持つ生態)。おそらく本種もその性質があるドルクスだと思われ、パリーオオクワ(リツセマオオクワ)あたりに近い食性だと思われる。
この対策としては、3令中期〜後期はマットで飼育することでこの暴れを防止することができると考えられる。
しかしながら、マットに投入したところで暴れる個体は暴れるようで、マットに入れれば暴れないと一概に言えないようである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これも、本種以外にもパリーオオクワやったことある人だと分かると思うんですけど、3齢中期以降に菌糸に入れるととにかく暴れるんですよ。しかも、ある程度成長するとそこから大きく体重を増やすことはないようで、3令中期以降の2本目または3本目に菌糸に入れるメリットを感じないんですよね。
本種もそれがよく起こるクワガタで、この暴れは1つ目に述べた暴れと違って成熟には大きく影響はなさそうなものの、単純に暴れている間にも成熟は進んでいるのとエネルギー消費を考えると無駄な行動だと思うんですよね。こういった行動をする種類に共通してるのは、産卵は材だけではなくマットにもするということがポイントであると思います。これは要するにその種類がエサとして必要とするものが(♀が卵を産んでその後幼虫が育つことができると判断している?)材だけではなく、土に埋まったような湿潤な材を好んでいる生態だと思うんですよね(イメージしやすい国産種で言うところのヒラタやノコギリのような根食い系のこと)。
で、最終的に蛹化前に土中に出てきて蛹化するんですかね?
飼育しているとそうとも思えるような行動を取りますね。
本種は発見されたのが比較的最近で現地での生態はほとんど分かっていないと思うのですが、飼育してると何となく予想がつきますね笑
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
③還元率についての考え方
まず、還元率の説明からすると、
還元率=蛹体重÷最終幼虫体重×100
で算出される、最終計測された幼虫体重からどれだけ蛹の重さに還元されたかの比率のことであり、この還元率の数値が大きいほどその個体がより多く蛹の重さに還元できたということになる。
(この還元率は種類によって割合が変化する気がしていてどの種類も80%超えたらすごいねではない気がします?これからは他の種類でも調べてみます)
例)
最終体重が25gの個体が2頭(それぞれAとBとする)いたとして、その個体がそれぞれ蛹化するとその蛹体重がそれぞれ個体Aが17g、個体Bが18gだった。そうすると、還元率はA68%で、B72%になる。そうして、それぞれの個体が羽化してそのサイズを計測すると74mmと75mmと差が出た。還元率の良かったBの個体の方が大きくなり、還元率で差が出たと言える。
これは今回でこそ同じ体重の個体はいなかったが、実際に同じ幼虫体重の個体から大きさに差が出て羽化してくることはよくあり、これがいわゆる"還元率の差"であると考えられる。
言い換えれば、還元率≒幼虫の食物消化率だと捉えることもできるのではなかろうか。
しかしながら、個体によって消化の上手い個体下手な個体または血筋もあると考えていて、今回考えた理論として、この"還元率の良い個体を選別し固定すること"でより大きな個体を羽化させることができるのではないかと考えている。
これはあくまで私の考察ですので、鵜呑みにしないようお願いします。これからのブリードで検証していきたいです。
<最後に>
では、最後に今回のAライン最大個体の74.1mmの♂画像を掲載して終了します!
羽化個体数も少なくあまり面白くないのと、
めちゃくちゃ長文になってしまいすみませんでした💦
この内歯下がりの特徴、弧を描きながら鋭く尖ったシャープな大顎が他のオオクワ系にはない本種の大きな魅力だと思います。
大きくするのは難しいと感じますが、飼育自体は非常に簡単ですので、おすすめのクワガタです!
現在は野外品こそ入荷がないものの飼育品が比較的安定して流通してます。興味のある方は是非飼育してみてはいかがでしょうか?
次は今年羽化してくるであろうBラインを紹介できたらと思います。記事ができるのは秋くらいになるかなぁと思います。
このBラインで特大が出る予感が全くしませんが、期待しないでお待ち下さい(笑)
今後はとりあえず、いくつかした考察を検証しながら以前羽化させた77.0mmを超える個体を目指して飼育継続していこうと思います。
ではでは(・ω・)ノ
今回は、私が唯一5年以上累代を継続している
ババクルビデンス(旧流通名:南ベトナムクルビデンスssp.)
Dorcus curvidens babai
の飼育記録になります。
昨シーズンより2ラインに分けて管理しており、今回紹介するのはAラインになります。
<種親紹介>
産地:ベトナム・ダラット
累代:CBF2
アウトブリード(それぞれ別の血の掛け合わせ)
種親♂
大顎を広げた最大値で72mm
(大顎を閉じると70mm)
♀43mm
<飼育記>
◯2020年10月3日産卵セット
小ケースに底3〜4cmフォーテック社製産卵一番(無添加微粒子一次発酵マット)を固詰めし、その上に材を置き周りもマットを詰めて埋めるオーソドックスな産卵セット。本種はマットにも産むので、マットも微粒子が良い
◯2021年2月13日産卵セット割り出し
情報が残っておらず、何頭割り出したのか分からないが、3齢複数、2齢4〜5頭くらい出てきたのでその♂と思われる2齢幼虫と♀の3齢初期のみ大夢オオヒラタケ800cc菌糸に投入したと思われる。
飼育温度18〜22℃
この時色々ゴタゴタしてて、時間が作れなかった頃だったので割り出しが遅くなってしまいました💦
4ヶ月経っての割り出しが遅いのがよく分かりますよ…
◯2021年5月3日菌糸交換
♂4頭菌糸交換を行なった。♀は交換せずそのまま、全て17℃で管理。正直言ってここまでは良かった。この後、地獄を見ることに…。
正直、そういう意味では今回の記事は失敗談になるかと思います💦
◯2021年9月18日菌糸交換
この時点で♂3、♀全個体蛹室作成or蛹化羽化。♂は暴れて劣化したドロドロ蛹室で蛹化不全。♀は17℃でそのまま蛹化して蛹化不全→☆を多発させてしまった。前蛹で気づいて24℃に出した一頭の♀のみ救出、無事羽化まで持っていくことができた。
一方、♂幼虫は一頭だけ暴れておらず、菌糸交換を実施。
25.3gだった。糞をする前は26gあったので暴れず、スムーズに蛹化すれば75mmくらいならいけるかも?
♂は蛹室作成した個体のみ23℃管理のブリードルームへ出し、25.3gの個体のみ17℃管理継続。
◯2021年10〜11月♂羽化
♂が3頭羽化、完品羽化できたのは60mm台半ばの一番小さかった個体のみ。一頭は蛹の時点で左右非対称でおかしく残念ながら片翅が形成不全となっていた。もう一頭は蛹自体は歪だったものの羽化時はたまたま居合わせて不全しそうなところを手助けしてことなきを得た。不全個体は今のところ生存している(この個体は結局羽化から2ヶ月後に☆になってしまった)。
基本的には、17〜18℃の温度帯は蛹化する温度だが、上手く蛹化できない温度なのかもしれない。
そもそも、今回は暴れた個体に関しては蛹室がドロドロになったまま蛹化させてしまったことが一番の失敗だとも思えます。これからは菌糸の状態に注意したいですね。
◯2022年1月中旬最後の♂蛹化
最終体重25.3gの♂が蛹化していた。
初めて蛹体重を計測したところ、17.3gだった。
管理温度16〜22℃。
◯3月21日最後の♂羽化
最終体重25.3gの♂が羽化していた。
↓一週間後
全体的に少し細身で、蛹体重の割にはサイズが伸びたようだ。
しかしながら、見た感じだと75mmに少し足りないくらいのサイズかなぁと。1ヶ月後に計測するのが楽しみだ。
割り出しが遅くなってしまい、全体的に小さくなってしまったのと、不全が目立ったので2代目のブリードは蛹化時の温度と蛹室の状態にも気を遣いたい。大した個体がおらず申し訳ないが、羽化個体紹介へ。
<羽化個体紹介>
①不全♂70.0mm
・2021年2月13日大夢Bオオヒラタケ800ccへ
・5月3日大夢Bオオヒラタケ1400ccへ→体重記載忘れ17〜19g(頭幅13mm)
・9月羽化
2本返しで不全ではあるものの、サイズは70mmに届いた。
②♂65mm
・2021年2月13日大夢Bオオヒラタケ1400ccへ
・5月3日大夢Bオオヒラタケ1400ccへ→16.2g(頭幅11.9mm)
・11月14日羽化
この個体は、羽化後干からびさせてしまいました…。
画像ちゃんと撮れていなかったのでこんな画像ですみません。
③♂(軽微不全) 70mm
・2021年2月13日大夢Bオオヒラタケ800ccへ
・5月3日大夢Bオオヒラタケ1400ccへ→ラベル紛失17〜19g
・11月羽化
♂親似ですね。
サイズ稼ぎには不利な湾曲具合ですが、個人的に好きな形の一つです。
種親に使おうと思っていたのですが、羽化から2ヶ月後の1月中旬に☆になってしまっていました。
④♂74.1mm
顎閉じの方が本種の良さがわかると思い掲載…顎閉じ写真もどうぞ!
・2021年2月13日大夢Bオオヒラタケ800ccへ
・5月3日大夢Bオオヒラタケ1400ccへ→11.1g(頭幅未計測)
・9月18日
ラ◯バージャックオリジナル菌糸既製(ブナオガヒラタケ?)1400ccへ→25.3g
・2022年1月中旬蛹化→17.3g
・3月21日羽化
この個体は♂親に似ているのですが、顎先が少し前を向いていて格好良いですね。今季最大個体です。
⑤♀43mm
画像割愛
・2021年2月13日割出
大夢Bオオヒラタケ1400ccへ→3齢4.9g
・7月中旬羽化
<飼育方法まとめ>
本種の飼育は簡単ですが、改めて記載します。これから始めるまたは飼育したいと思っている方の一助になれば幸いです。
◯成虫飼育
・寿命について、本種はオオクワガタ系のドルクスなので非常に長寿で当方ではペアリングに使用した♂でも3年生きている。
・飼育温度については、丈夫で飼育温度帯も幅広い。関東の平野部で室内飼育であれば冬でも常温飼育できる(その場合は冬眠?する)。最高温度も30℃でも結構耐えられるが、寿命が短くなるようで生体に負担が大きくおすすめできない。16〜23℃での飼育がおすすめ。
○ペアリング・産卵
・ペアリング時はたまに♀殺しすることがあるので要注意。当方では顎縛りなどは特にせず一週間以上同居ペアリングさせているが一度もそういったことは起きたことはない(そもそもうちで飼育している本種は♂同士近くに置いても滅多に喧嘩しない)。しかし、♀殺しが起きた例もあるのでペアリングには一応注意する必要がある。
・産卵は20〜24℃の高めの温度で行い、産卵活性が落ちる冬時期はできるだけ避けた方が良い。
・産卵セットは小〜中サイズ(コバエシャッターやコバエ抑制ケースetcの規格で)のケースに、微粒子発酵マットを適度に加水して固詰めし、その上に少し柔らかめの産卵材を加水(マット・材共に加水量はここでは詳しく説明しないが程よく多すぎない少なすぎないよう注意する)して周りをマットで埋めるオーソドックスなセットで良い。特に植菌材などの特別な産卵材は必要なく普通の産卵用の材で問題ない。・産卵形態は主に材に産卵するが、マットにも産卵する。典型的な根食い系の産卵形態。
◯幼虫飼育
・初2齢で産卵セットから割り出し、基本は個別にボトルやプリンカップなどで飼育する。
・マット、菌糸、材どれでも飼育可能だが、菌糸が一番成長が良い。本種は3齢中期以降菌糸を好まない個体が多く、暴れることが多いので適宜マットに交換するなどして対応するのもあり。
・幼虫飼育温度は成虫よりも少し範囲が狭いと思えば良い。オオクワガタ系のため多少高い分にも低い分にも問題はない。
・割り出し(2齢初期と仮定)から羽化までの期間は、♀で4〜10ヶ月、♂で半年〜12ヶ月強ほどとなっており、だいたい♀の方が羽化が早い。
◯蛹化羽化
・本種は18℃未満でも蛹化するので、冬時期の蛹化で不全することがあるので注意する。今飼育記では不全が多かったが、比較的蛹化羽化は得意な方である。
・大体どの種類もそうだが、菌糸で飼育した場合は菌糸の劣化により蛹室が変形したり泥化して蛹が蛹室内で引っ付いてワンダリング(蛹は全く動かないわけではなく床ずれ防止のためか適度に回転して運動している)できず☆になることもあるので注意する。
できるだけ温度が安定する場所での管理をオススメする。目安は18〜24℃。
また、羽化後の休眠期間は20℃以上で3〜4ヶ月くらい。もちろん、温度が低いと長くなる。
<まとめ・考察>
本種に関しては、以前からレコード獲得を目指して飼育に取り組み、大型個体を飼育する方法を模索して色々考察をしてきました。
最近、以前ブログに書いた考察を見ていて新たに大型化に向けた仮説が生まれたので次期ブリードに向けて考察をしていきます。
①幼虫の時期に合わせた飼育温度の緩急
本種の生息場所は、標高1500m程の高地であり、高い温度だと成熟が早くなり低温でじっくりと飼育することで大型化できると思っていたのだが、どうやら大型化には高めの温度と低い温度を使い分け、緩急をつけた方がいいかもしれない。
→本種においては23℃でも18℃程度の温度帯でも成長期の成熟スピードがそこまで大差がないと感じていて、成長期は少し高めの温度で一気に太らせ、途中から温度を少しずつ下げていき、成熟期に極低温を経験させることで、蛹化スイッチを入れることなく食べたものをしっかり消化させ身につけさせる"熟成期間"を持たせる。
しかしながら、極低温の温度はまだよく分からないので実際にブリードして検証していきたい。
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これに関しては人間だってそうだと思うんですよね。
食べたものがすぐに身になって身長が伸びるわけじゃないですよね笑
それと同じ理論です。
クワガタ幼虫の場合は前蛹になる時は体内の糞が全くない状態にしているはずなので蛹化するために蛹室を作ろうと思ったら、とりあえず未消化だろうが糞として排出するので実計測体重よりも体内の未消化物分体重がごっそり減るわけですよ…笑
いわゆる、そうして残った身のみが、一般的に言われる"還元率"なんだと思うんですよね。だから、個人的には最大体重を見たらいけないと思っていて、その理由に最大体重ってことは、それより大きくならない状態で餌を交換するという幼虫にとっては無駄以外の何ものでもないことをしているわけで、さらに交換したストレスによって成熟になんらかのマイナス点があると思うんですよね(というか、還元率に大きく影響すると思ってます)。
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②本種の暴れる理由について
主に理由が二つあると考えており、
1.羽化まで必要だと思われるエサの量がボトル内に足りず、エサの豊富にある場所を求めて動くための暴れ。
→ボトル内の菌糸またはマットをある程度食べると、幼虫自身が"このまま成長を続けてエサの量が足りるか"を判断し、足りない場合は新たなエサ場を求めて徘徊する行動(暴れ)をとる。そうなると、その個体の危機管理能力が働くことで体重増加が止まり、蛹化に向けて成熟スピードが上がると考えられる。そのため、大体の個体がこの徘徊行動を取るとそれ以上大きくならない(徘徊するため痩せてもいると思われる)印象を受ける。
そのため、3令の中期以降は食べ進むスピードが早いと思われる、チップの細かい菌糸だと食い上がるまでが早くなりより暴れやすくなると考えられる。また、容器は大きめの容器で幼虫自身にエサが豊富にあると思わせる方がこの徘徊行動(暴れ)を取らせにくくできると考えられる。
2.エサの状態が幼虫に合わず、新たなエサを求めて動くための暴れ。
→単純に菌糸が新しすぎたり、そもそも3令後期に菌糸が合わなかったりする(これはノコギリやニジイロなんかも起こる現象で3令中期〜後期に蛹化や越冬のために材から脱出し土中で過ごす根食いのクワガタが持つ生態)。おそらく本種もその性質があるドルクスだと思われ、パリーオオクワ(リツセマオオクワ)あたりに近い食性だと思われる。
この対策としては、3令中期〜後期はマットで飼育することでこの暴れを防止することができると考えられる。
しかしながら、マットに投入したところで暴れる個体は暴れるようで、マットに入れれば暴れないと一概に言えないようである。
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これも、本種以外にもパリーオオクワやったことある人だと分かると思うんですけど、3齢中期以降に菌糸に入れるととにかく暴れるんですよ。しかも、ある程度成長するとそこから大きく体重を増やすことはないようで、3令中期以降の2本目または3本目に菌糸に入れるメリットを感じないんですよね。
本種もそれがよく起こるクワガタで、この暴れは1つ目に述べた暴れと違って成熟には大きく影響はなさそうなものの、単純に暴れている間にも成熟は進んでいるのとエネルギー消費を考えると無駄な行動だと思うんですよね。こういった行動をする種類に共通してるのは、産卵は材だけではなくマットにもするということがポイントであると思います。これは要するにその種類がエサとして必要とするものが(♀が卵を産んでその後幼虫が育つことができると判断している?)材だけではなく、土に埋まったような湿潤な材を好んでいる生態だと思うんですよね(イメージしやすい国産種で言うところのヒラタやノコギリのような根食い系のこと)。
で、最終的に蛹化前に土中に出てきて蛹化するんですかね?
飼育しているとそうとも思えるような行動を取りますね。
本種は発見されたのが比較的最近で現地での生態はほとんど分かっていないと思うのですが、飼育してると何となく予想がつきますね笑
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③還元率についての考え方
まず、還元率の説明からすると、
還元率=蛹体重÷最終幼虫体重×100
で算出される、最終計測された幼虫体重からどれだけ蛹の重さに還元されたかの比率のことであり、この還元率の数値が大きいほどその個体がより多く蛹の重さに還元できたということになる。
(この還元率は種類によって割合が変化する気がしていてどの種類も80%超えたらすごいねではない気がします?これからは他の種類でも調べてみます)
例)
最終体重が25gの個体が2頭(それぞれAとBとする)いたとして、その個体がそれぞれ蛹化するとその蛹体重がそれぞれ個体Aが17g、個体Bが18gだった。そうすると、還元率はA68%で、B72%になる。そうして、それぞれの個体が羽化してそのサイズを計測すると74mmと75mmと差が出た。還元率の良かったBの個体の方が大きくなり、還元率で差が出たと言える。
これは今回でこそ同じ体重の個体はいなかったが、実際に同じ幼虫体重の個体から大きさに差が出て羽化してくることはよくあり、これがいわゆる"還元率の差"であると考えられる。
言い換えれば、還元率≒幼虫の食物消化率だと捉えることもできるのではなかろうか。
しかしながら、個体によって消化の上手い個体下手な個体または血筋もあると考えていて、今回考えた理論として、この"還元率の良い個体を選別し固定すること"でより大きな個体を羽化させることができるのではないかと考えている。
これはあくまで私の考察ですので、鵜呑みにしないようお願いします。これからのブリードで検証していきたいです。
<最後に>
では、最後に今回のAライン最大個体の74.1mmの♂画像を掲載して終了します!
羽化個体数も少なくあまり面白くないのと、
めちゃくちゃ長文になってしまいすみませんでした💦
この内歯下がりの特徴、弧を描きながら鋭く尖ったシャープな大顎が他のオオクワ系にはない本種の大きな魅力だと思います。
大きくするのは難しいと感じますが、飼育自体は非常に簡単ですので、おすすめのクワガタです!
現在は野外品こそ入荷がないものの飼育品が比較的安定して流通してます。興味のある方は是非飼育してみてはいかがでしょうか?
次は今年羽化してくるであろうBラインを紹介できたらと思います。記事ができるのは秋くらいになるかなぁと思います。
このBラインで特大が出る予感が
今後はとりあえず、いくつかした考察を検証しながら以前羽化させた77.0mmを超える個体を目指して飼育継続していこうと思います。
ではでは(・ω・)ノ